“伝えたい人”の原動力を形にする 

三塩菜摘(Natsumi Mishio)

参加プログラム:iLEAP TOMODACHI Social Innovation in Seattle, 2014
名古屋短期大学2年生(参加当時)


「ひきこもり」の経験を通じて感じた違和感 

 14歳から19歳のころにひきこもりだった時期があったんです。当時の私は、「自分が悪いんだ」や「相手が悪いんだ」など、自分視点でしか物事を考えていなかったと思います。ただ、その中でも「本当にそれだけなのかな」という気持ち、違和感が自分の中にあって。周りの協力のおかげでひきこもりを脱却した時に、そうした違和感を抱えながら「自分のことを誰も知らない場所へ行きたい。そして、何か学ばなければ」という焦りのような気持ちがありました。その思いから、海外大学と単位互換制度を持つ短大に進学し、半年間アメリカに留学をしました。そこでは、色々な国からの留学生や国ごとに異なる事情、多様な価値観などこれまで自分が経験したことがない多くのことを知る機会になりました。やっぱり世界は広かった、のです。自分が持っている価値観は狭く、違和感は正しい。そのことを自覚しはじめ、段々と「私はそれでいいじゃないか」と思うようになっていきました。 
 半年間の留学を終えて、もう少し長く留学に行ける機会が無いか探していたところ、たまたまSNSで知ったのがこのプログラムでした。その当時は、ソーシャル・イノベーションという言葉も知らないし、ウェブサイトには横文字が多いし…。それでも、「リーダーシップ」を基軸にしたプログラムということに「はっ」としたのを覚えています。語学学校や大学以外で学べるプログラムがあるんだと思いましたし、なぜそのプログラムを行うのかという開催団体の思いや、テストの点数ではない選考方法を見てとても惹かれる自分がいました。ただ応募した当初は、私が一期生だったこともあってあまり情報もないし、好待遇すぎて疑問も大きかったのですが。(笑)
  

プログラムで気づいた「社会」の視点  

 プログラムに参加してみて、「自分が悪い・相手が悪い」という感覚は、全て“自分視点”で物事を見ていたから、ということに気づきました。 “社会そのものにも課題がある”といったことなど、「社会から個人を見る・物事を見る」という視点で考えることに出会ったんです。その他にもシアトルという非日常的な空間の中で行われた様々なセッションを経て、自分は「教育」という分野に違和感を持っているんだ、ということに気づいたということ。そして、自分自身が苦しんだ経験の根本は、「社会の“教育”という部分に原因、理由があるのでは」ということに気づき、それまで「モヤモヤ」という言葉でしか表現できなかったことを、自分の中でしっくりくる形で表現できるようになりました。これがプログラムに参加して得た一番大きな気づきであり、現在までのキャリアにつながる新たな原体験となりました。 

 プログラムでは、参加者同士の強いつながりも生まれますが、私の場合は別プログラムの参加者との繋がりが次のステージにつながりました。偶然ではありますが、教育関連の事業を営んでいた日本人の方がiLEAPの別プログラムに参加していて、その繋がりから帰国後、東南アジアでの事業に参画することになったんです。  

 東南アジアでは、日本だけではなく世界中の大学生向けのスタディツアー開発の仕事に従事していました。その過程で、「このプログラムを大学生以外の年代、例えば小学生や中学生に提供したら、どのような変化が起こるのだろう?」や「いつのタイミングで、誰に、どんな方法でプログラムを提供すれば本当の意味での人材育成になるんだろう?」ということに興味を持ちました。自分自身が生まれ育った母国に原経験があるからこそ、世界の教育ではなく、日本の教育の仕組みや日本人のことをもっと知りたい、という思いがありました。そのような経緯から帰国することを決め、たまたまご縁があった愛知県岡崎市で教育事業を行うNPO法人で働くことになりました。 

「“伝えたい人”の原動力を形にする」 

 現在所属するそのNPO法人では、小・中・高・大学生に向けて『未体験の挑戦と失敗を、社会へ出る前にやってみる』ことを軸にしたプロジェクトを提供しています。主要事業の小学生向けのプロジェクトは、毎年3000人以上の小学生が参加する一大イベントで、子どもたちが「夢や希望を持ち、その実現のためなら困難にでも立ち向かう」力を得る機会を提供しています。そんな数々の事業を経験してみて、現在は「教育」の軸以外で考えるプロジェクトにも可能性を感じはじめています。具体的にはデザインの分野で、「“伝えたい人”の原動力を形にする」をコンセプトに、英語のパンフレットの作成や企業の海外営業のための資料作成を行うプロジェクトを始めています。現在は教育とデザイン、二つの軸で自らプロジェクトを創って運営をしていくことで、プログラムのテーマでもあったwho am I?を日々問いながら、一歩ずつ前に進んでいます。 

2017年7月20日掲載

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***プログラム後の参加者の挑戦をお届けする卒業生インタビューシリーズ。全6回に渡ってご紹介します。***

インタビュー・書き手:津田 光佳、登坂 直弥、本郷 真美
監修:川口枝里子

第1弾、 千葉 恵介 (Keisuke Chiba)さん:【仲間との経験を通して気づいた“自分の生き方”】

第2弾、西森千咲(Chisaki Nishimori)さん:【一生大切にしていきたい。プログラムで学んだ「自分自身を大切にし、本当にやりたいことをやる」ということ。】

第3弾、江田翔太(Shota Eda)さん:【諦められてきた社会の課題を根本から解決したい】

第4弾、菊本寛(Kan Kikumoto)さん:【「みんなが誰にでも、優しい社会」を創りたい。】

第5弾、三塩菜摘(Natsumi Mishio)さん:【“伝えたい人”の原動力を形にする】

第6弾、間瀬海太(Umita Mase)さん:【「発想の仕方を変える」―シアトルで学んだイノベーションの可能性】