「みんなが誰にでも、優しい社会」を創りたい。

菊本寛(Kan Kikumoto)

参加プログラム:iLEAP TOMODACHI Social Innovation in Seattle, Spring 2016
上智大学4年生(参加当時)

プログラム後に選んだ挑戦の道 


 僕はこのプログラムに参加した後、元より行きたかったイギリスの院へ2016年10月から進学しました。Gender and Sexualityについて、心理学や文学、社会学、さらには法学などいろんな分野から考えるというプログラムです。2017年10月まではイギリスに滞在し、その後は日本・イギリス・カナダ・アメリカ…いずれかの国で就職したいと考えています。 
 ただ、帰国後もこれは続けたいなと思っていることがあります。それが僕の始めたブログです。自分が情報発信することが楽しくて。書き続けたいと思っています。 

ブログを始めたきっかけ 

 初めに僕がこのプログラムに参加した目的には、日本でも活動を行う国際人権NGO「Human Rights Watch」でインターンしていたことが大きく関係しています。インターン時には様々な人権問題を扱いました。

 ある時、LGBTであることが原因でいじめられた経験を持つ子どもたちの調査とレポートを作成することになりました。アメリカから来ていた調査員と約1年間、日本を回り、僕はインタビューの通訳やインタビュイーとのコーディネートを担当しました。その過程で、当事者や大学の先生、弁護士、市の職員などいろいろな方からそれぞれの視点での話を聞くことができたのですが、その際に実感した課題が「当事者が得られる情報の少なさ」でした。調査を通して、当事者を中心とした人たちが、学校でジェンダーやセクシュアリティについて学ぶ機会がなかったり、周りにいるであろう当事者が可視化されていなかったりするために、ジェンダーやセクシュアリティに関する様々な情報を得ることができず、苦しんでいる状況を目の当たりにしたのです。僕は自分もゲイとしての苦しみをわかっているからこそ、人々に寄り添いたいということで情報発信をしたいと思うようになりました。 

Huffington Postに掲載された菊本くんの記事。当事者としての鋭い指摘が反響を呼びました。

情報発信を支える”リーダーシップ” 

 Human Rights Watchで感じた「情報不足」という課題を3年越しに取り組めつつあると思うのですが、それは自分のリーダーシップのタイプを知ることができたからと思います。リーダーシップについて、このプログラムで学ぶまでは「学級委員長とかサークルの部長のようなポジションの人たち」という一つのタイプしかないと思っていました。しかし、実はリーダーシップは6つもタイプがある!と驚いたことを覚えています。では自分はどのタイプのリーダーシップが合っているのか。みんなからの客観的な視点と自分の今までの経験から、自分のリーダーシップのタイプを知ることができたのは大きかったです。考えてみると、確かに元から情報の発信やみんなを盛り上げることとかは得意だと思っていました。だから「ブログ発信ってもしかして自分得意な事かもしれない」とプログラムで気づたんです。 

 さらには伝え方についても、人に伝わりやすい発信方法をできるようになった気がします。プログラム中のactivityを通して、言葉の裏側に隠れた真意について感じたり、考えたりする機会が多かったことが大きいです。「好き」っていう言葉ひとつとっても、いろんな「好き」がある。では、自分の真意を表したかったら、どういう表現がいいか、どういう振る舞いがいいかを考えるきっかけ、機会をもらえたと思います。それが人と会って話したりブログで書いたりする中で生かされていると思います。 

目指すは優しい社会

 僕は、「みんなが誰にでも、優しい社会」を作りたいと思っています。僕にとっての優しい社会とは知らない人やものを受け入れ合うことのできる社会のことです。みんながみんな世の中にあるすべてを知ることは無理だと思います。ただ、だからと言って「知らないから排除する」のではなく、「知らないからこそ受け入れる」そんな社会が作れたらいいなあと考えています。

 例えば、アイルランドで同性婚が2年前に合法化された際に、当事者たちが自分たちのことを一軒一軒訪問して理解を求めたそうです。はじめは拒否されるかもしれないですが、伝えることで、共感が生まれ、その共感が変化を生むと思います。僕もブログを通じてたくさんの人に共感を生み出していきたいです。 

 現状では身の回りの人にもいい影響は与えられていると思います。もちろん会った人が変わったかどうかは知りようもなく、具体的な数字として見えるわけではありません。しかし、このプログラムを通じて明らかに人生の質はよくなったので、今までの知り合いに対しては幸せを提供できているのではないかなと思っています。むしろそのような考え方、「僕と会うことによって幸せになるだろう」という考え方を得られたのが今回のプログラムから得られたものだったかなと感じています。

菊本くんのブログはこちら:カヨンセとの時差は9時間。 https://kanyonce.com/
 Huffington Postに転載された記事はこちら:「オネエ」が笑われることの何が不快か http://www.huffingtonpost.jp/kanyonce/entertainment_show_b_14423632.html

2017年7月13日掲載

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***プログラム後の参加者の挑戦をお届けする卒業生インタビューシリーズ。全6回に渡ってご紹介します。***

インタビュー・書き手:津田 光佳、登坂 直弥、本郷 真美
監修:川口枝里子

第1弾、 千葉 恵介 (Keisuke Chiba)さん:【仲間との経験を通して気づいた“自分の生き方”】

第2弾、西森千咲(Chisaki Nishimori)さん:【一生大切にしていきたい。プログラムで学んだ「自分自身を大切にし、本当にやりたいことをやる」ということ。】

第3弾、江田翔太(Shota Eda)さん:【諦められてきた社会の課題を根本から解決したい】

第4弾、菊本寛(Kan Kikumoto)さん:【「みんなが誰にでも、優しい社会」を創りたい。】

第5弾、三塩菜摘(Natsumi Mishio)さん:【“伝えたい人”の原動力を形にする】

第6弾、間瀬海太(Umita Mase)さん:【「発想の仕方を変える」―シアトルで学んだイノベーションの可能性】